移住ブーム、都会は快適?田舎の生活で得る知恵と工夫

便利なことより、暮らしやすいこと
現代社会では、何事も便利なことが当たり前になり、私たちの周りには便利なものが溢れています。はじめは画期的で、家事や仕事からの解放を有り難いと感じたものの、気がつけば日常の一部になり、日用品や家電製品、食料品ばかりか、今や、デジタル社会に振り回されている有様です。キーボードやスマホの画面をタッチするだけで用件が処理できるのは、対面でのコミュニケーションと違い、実感もなく味気ないものに変化しました。コロナ禍で一気に普及したビデオ会議が当たり前になり、キャッシュレス社会での買い物ではスマホの操作だけで済んでしまいます。
デジタル社会で普及したのもを相手に暮らす私たちには、デジタルの操作を課せられ、新しい義務を感じて生きるということになるのです。便利を引き換えに私たちが得たこととは、便利を自分のものとし、利用し尽して生きなければならないということです。社会に溢れる便利の中で、欲しくない便利、避けたい便利があれば、自分自身で自分の生きる環境を作るしかないのでしょう。

都会を離れ、田舎で暮らそう
都会の喧騒から離れ、地方や地元へ移住する「脱都会化」の流れが加速しているようです。都会での生活は便利で、楽しめるものも多く、住み続ける人生への安心感もあっても、なにか、自分なりの人生を送りたいという充実感もほしいですね。テレビや雑誌、ネットなど各メディアで移住の魅力がとり上げられ、都会の密集を脱出して地方に移住することが、ブームとなっています。
企業ではリモートワーク・テレワークが導入され、どこで暮らしていても仕事ができる環境になったことで、地方移住や二地域居住、二拠点生活に興味をもつ人は多くなりました。過疎に直面する地方自治体にとっては、絶好の機会で、移住支援制度を用意する自治体も増えています。
2011年の東日本大震災がきっかけで、都市部に暮らすことへの価値観が崩れ、「地方に住むこと」に目を向ける人が増え、地方自治体の移住支援策がどんどん拡充されてきました。2020年に打ち出された国の地方創生の一環で「起業支援金」「移住支援金」によって、「移住」がより魅力的なものになりました。

自分のペースで暮らしやすさを見つける
都市部の暮らしが快適で便利なのは、「買い物が便利である」「自分が通勤しやすい」「公共交通機関が充実している」等、実感することが多いからなのでしょう。都会の暮らしは、生活の便利さや刺激、収入や仕事、遊びの選択肢の多さという魅力を求め、全国から人は集まります。 しかし、都会暮らしは便利で快適な反面、暮らしにくい面も多々ありますね。都会暮らしのメリットが、かえってデメリットとして感じることが多くなっています。
新型コロナ禍によって、移住が「憧れ」から「現実」のものになったのは、テレワークやリモートワークが一気に身近なものになったことで、「都市部に居なくても働けるのでは?」と考える人が増えてきているのでしょう。自然に囲まれ、都市部へのアクセスがいい「地方」が、仕事もできる移住先として人気になってきています。

「住めば都」を手に入れるために
田舎暮らしの情報に触れていくと、夢がどんどん膨らんでいくものです。周囲は緑に囲まれ、遠くに山の見える見晴らしのいい丘に家を建て、前の農園では季節の野菜を育て、庭では白い犬を飼って、自然の浸る生活を夢見てしまいます。でも、田舎暮らしの多くが不便であるから、憧れだけで「自然の中でのスローライフ」を体験できるとの思いは、打ち砕かれることにもなるのです。
自然の中でゆとりある生活を送りたい人や、週末のアウトドアアクティビティなどを充実させたい方々にとっては、メリットとなる点も多くあります。田舎暮らしを満喫できる人の特徴としては、「とにかく自然が好き」「人づきあいが得意」「自分から積極的に動ける人」「ポジティブ思考な人」「新しく創り出すことが好きな人」が、田舎暮らしの中で自分を生かせることができるのでしょう。

後悔はいつでも、誰にでもあること
田舎への移住をしたものの、「後悔した・・・」と感じることも多いそうです。移住が失敗したと感じる主な理由は、「食事や通勤などの、ライフスタイルの変化」「人間関係」「仕事」「住まい」「生活環境」「収入減によるお金の管理」であるといいます。移住のための準備不足として、「目的の明確さ」「事前のリサーチ不足」「理想とのギャップ」をあげています。不便なことに苦痛を感じることより、何かと知恵を使ったり、自分でなんとか工夫し、逆境に対して何でもやってしまう強さも必要ですね。田舎の暮らしに慣れていくことで、生きる力を身につけ、覚悟を決める必要もあるのです。
田舎暮らしは不便ばかりと言うけれど、不便を楽しみ、不便から得るものを見つけることで、喜びを得ることもできます。都会の暮らしが便利になるのはいいことだと思う反面、便利になったことで「楽しむ」とか「満足する」といった思いが得られるとは限りません。不便から得られる利益、「不便益」なるものが存在するのを、現代社会の中で気づくことは多いのです。

便利さは、工夫して利用しよう
仕事で目的地まで出向く場合、交通機関を利用することになれば、どの道順で、どの飛行機、どの列車に乗るのか、到着時間、費用までがスマホの操作で分かってしまいます。乗車券を買うのも、宿泊ホテルの予約も、宿泊代の支払いも、食事の支払いも、スマホで済んでしまうのは便利だと思ってしまいます。仕事だとしたら、予定通りに行動し、費用も切り詰めなければならないから良いことでしょう。しかし、休暇を取っての旅行だったら、こんな便利さを選んでしまうものでしょうか。
旅行の醍醐味は、「達成感」「特別感」「幸福」「主体性」などを得ながら、旅行を終えた時に本当に楽しかったと思えることにあります。スマホの示す行程をたどる旅行より、道順で多少の不安を感じたり、現地の人との交流から思いがけない景色を教えられたり、助けられたりすることで、楽しめることなのです。便利さに頼らず、不便なことで楽しみを増やすこともできるのです。