歴史から見える人々の暮らし、暦と祭りの文化
今日の趣き-blog-
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目次
1. 日本の古代からの信仰、五穀豊穣
2. 豊作を祈る春の祭り、祈年祭
3. 秋の収穫祭は、神嘗祭と新嘗祭
4. 伝統の祭祀が「勤労感謝の日」の起源
5. 日本各地の祭り、秋の感謝祭
6. 旬の実りを楽しみ、秋を満喫
一年最後の祝祭日となる「勤労感謝の日」ですが、さて、どんなお祝いをする日なのでしょうか。勤労感謝ですから、働く人に感謝をする日とされるので、子どもの頃は、家族のために働く父親に感謝する日だと思っていませんでしたか。確かにそういう面はありますが、実は勤労感謝の日の由来は父親への感謝とは少し違うところにあります。
日本では、古来より食料の生産、農作物の収穫は人々の生活を支え、国家として重要なものでした。農作物の中でも米は特別で、お金以上の価値あるものとされ、無事に収穫の時期を迎えたこと、その喜びを神に感謝する行事は、社会を維持するための事業ともいえました。
1. 日本の古代からの信仰、五穀豊穣
五穀豊穣(ごこくほうじょう)とは、穀物が豊かに実ること、農作物がたくさん収穫できることを祈念する言葉です。五穀とは日本古来の食糧である主要な5種類の穀物(米、麦、粟、豆、黍)をいい、五穀が豊かに実ることは人々の食料として生活を支え、特に、豊かな収穫の維持が、安定した暮らしや繁栄に重要なことでした。
古来より日本人は農耕社会を営み、五穀の豊作を願うことで自然に感謝していきました。あらゆる自然物に神が宿るとする自然信仰が生まれ、古代から続く信仰として、特に「米」は豊かさの象徴として崇め祀り、貨幣と同じように扱われました。収穫した農作物のうち年貢や税として収める必要から、豊作は手取りが増えることであり望ましいことでした。そのため、豊作祈願の神などへの信仰が起こり、五穀豊穣に御利益があるとされる神社が日本各地に多数存在しました。
五穀の種類
米(こめ) 日本の主食。豊富な炭水化物が含まれている。
麦(むぎ) 食物繊維が豊富で、商家に良い。
粟(あわ) ビタミンやミネラルがを含む雑穀で、栄養価が高い。
豆(まめ) タンパク質やミネラルが豊富で、栄養価が高い。
黍(きび) 雑穀の一つで、栄養バランスに優れ、甘味もある。
農耕民族である日本人は古来より「米」を命の根源として自然を畏敬し、豊作を願いました。五穀豊穣を司る神である稲荷神のご利益が主に商売繁昌・事業発展・家内安泰・子孫繁栄とされ、人々が参拝に訪れています。稲荷神社には「宇迦之御魂神(ウカノミタマ)」が祀られ、キツネは「神使(神の使い)」です。狐は春先に山からいち早く下りてくるので、田の神を先導する動物と考えられたとか、尻尾が豊かに実った稲穂を連想させるから、あるいはスズメなどの米を食う害獣を駆除するから、など諸説あります。
五穀豊穣を司る神様
保食神(うけもちのかみ) 古代日本において食物の神。五穀を創造して人々に供え、豊かな収穫をもたらす神。
豊受大御神(とようけのおおみかみ)日本神話において穀物の豊穣や食物の神。伊勢神宮の外宮主祭神。
稲荷神(いなりのかみ、いなりしん)稲作を司る農業全般に関わる神。農業だけでなく商業や産業の守護神。
大国主命(おおくにぬしのみこと)出雲大社に祀られている国造りの神。豊かな収穫、平和と繁栄をもたらす神。
2. 豊作を祈る春の祭り、祈年祭
祈年祭(きねんさい)は年の初めに穀物の豊作を祈るとともに、国家の安泰を祈願する祭りです。春の耕作始めにあたり、五穀豊穣を祈るお祭りで、「としごいのまつり」とも呼ばれます。「とし」とは漢字では「歳」をあて、「こい」は祈りや願いで、穀物の実りをさし、稲の美称です。お米を始めとする五穀の豊かな稔りを祈ることを意味します。
起源は古く、奈良時代の「延喜神名式(えんぎじんみょうしき)」によると、神宮を始め全国2,861社の神々に幣帛(へいはく、お供えをされる物、幣(ぬさ)ともいう)が奉られ、五穀豊穣・天皇安泰・国家安泰を祈りました。豊作を祈ることは国家の安泰、国民の繁栄を祈ることで、春に五穀豊穣を祈願し、秋には豊作を感謝する基本的な祭りが国家の祭祀として取り上げられてきました。「神嘗祭」「新嘗祭」とならぶ伊勢神宮の公式祭典です。
祈年祭の行事は応仁の乱以降すたれましたが、王政復古した明治2年に祭祀が再開し、戦前までは各神社に於いて2月17日に執り行われていました。戦後は国の祭典としての色彩は一時消失し、皇室祭祀のひとつになり、伊勢神宮を中心に全国の神社で現在も古儀のままの形で祈年祭が行われています。
3. 秋の収穫祭は、神嘗祭と新嘗祭
神嘗祭(かんなめさい、かんにえのまつり、しんじょうさい)は伊勢神宮だけの大祭です。「嘗」は、食べ物でもてなす、お供えものをして神をお迎えするという意味があります。その年に収穫された穀物を天照大神(あまてらすおおみかみ)が祀られている神宮にお供えし、その年の恵みに感謝するというものです。10月15日から17日にかけて執り行われます。
伊勢神宮には天照大御神をお祀りする内宮(ないくう)と、衣食住を始め産業の守り神とされる豊受大御神(とようけのおおみかみ)をお祀りする外宮(げくう)があります。 神宮のお祭りは、外宮先祭という習わしがあり、外宮で15日から16日にかけて、新米を初めとするお食事を奉納する儀式が行なわれ、16日から17日に内宮でも同様な儀式が行われます。17日朝には、宮中の神嘉殿で天皇陛下が神宮の方角を向き遥拝されます。
新嘗祭(にいなめさい しんじょうさい)は収穫された新穀を神に奉り、その恵みに感謝し、国家安泰、国民の繁栄をお祈りします。「新」は新穀を「嘗」は奉ることで、舌の上にのせて味をためすという意味で、「新嘗」はその年に収穫された新穀を神様に奉って恵に感謝し、口にすることを表しています。このお祭りは毎年11月23日に宮中を始め、日本全国の神社で行われています。特に宮中では天皇陛下が自らお育てになった新穀を奉るとともに、その新穀をお召し上がりになります。このお祭りが11月下旬に行われるのは、東北や北陸などの収穫が済むのを待って行われるといわれています。
新嘗祭の歴史は古く、飛鳥時代に行ったと「日本書記」に記述があります。現在でも、新嘗祭は宮中をはじめ全国の神社で行われており、春の五穀豊穣を祈願する祈年祭と合わせ、重要な祭祀とされています。とくに宮中では、天皇陛下が自らお育てになった新穀を奉るとともに、その新穀をお召し上がりになります。新嘗祭は宮中恒例祭典の中の最も重要なものとされ、新天皇が即位の礼の後、初めて営まれる大規模な新嘗祭を大嘗祭(だいじょうさい)といいます。
4. 伝統の祭祀が「勤労感謝の日」の起源
春に豊作を祈り、秋の収穫に感謝する稲作を中心とした営みを、日本人は永年にわたり繰り返して来ました。「勤労感謝の日」は、新嘗祭という祭祀に由来します。1873年(明治6年)の太政官布告により、11月23日は1947年(昭和22年)まで「新嘗祭」という名の祝祭日でした。新嘗祭が「勤労感謝の日」になったのは1948年(昭和23年)で、戦後のGHQの占領政策により改称されました。その後、「国民の祝日に関する法律」により、「勤労感謝の日」に改称し、固定日の休日としては最も長く続いています。
新嘗祭は、旧暦では11月の第2の卯の日に行われていました。1873年(明治6年)に太陽暦(グレゴリオ暦)が導入された際、旧暦11月の第2の卯の日を新暦にあてはめると翌年の1月になってしまうため、新暦の11月第2の卯の日で行うことにしました。それが11月23日でした。翌年からは日付が変動しないよう11月23日に固定されました。「勤労感謝の日」に引き継がれた後も、「勤労感謝の日」は11月23日に固定され、現在に至ります。
国民の祝日には皇室の祭祀を起源としたものが多く含まれています。
4月29日の昭和の日は、以前は「昭和天皇誕生日(天長節)」
2月11日建国記念日は「紀元節(神武天皇即位の日)」
3月の春分の日は「春季皇霊祭(歴代の天皇・皇后・皇親)」
9月の秋分の日は「秋季皇霊祭」
11月3日文化の日は「明治節(明治天皇の誕生日)」
いずれも戦後、1948年の「国民の祝日に関する法律」施行後、現在の名称に改められました。
もうひとつの由来? Thanksgiving Day(感謝祭)はアメリカ合衆国やカナダなどで祝われる祝日のひとつです。アメリカでは毎年11月の第4木曜日、カナダでは毎年10月の第2月曜日に行われます。日本のプロテスタントでは、収穫感謝日(しゅうかくかんしゃび)と呼びます。戦後、GHQにより改称された「勤労感謝の日」の、もうひとつの由来? ともいわれます。
5. 日本各地の祭り、秋の感謝祭
秋祭(あきまつり)は9月から11月に行われる、農耕の収穫を感謝する祭り、収穫祭です。神社で神饌(しんせん、供える供物のこと)を供え、直会(なおらい、酒食する宴)を催します。秋祭りは刈初め(かりぞめ、早稲の穂を採ってきて焼米を作る)の祭りである八朔(はっさく、八朔の日は旧暦8月1日をいう)から、新穀の感謝の祭りである新嘗祭(にいなめさい)までの祭礼行事をいいます。
民間の秋祭りは、春から秋まで農耕を助け、稲田を守ってくれた田の神に収穫を感謝し、田の神が人里離れた山に帰る山送りの習わしです。秋の収穫祭として行われるもので、霜月祭(しもつきまつり、11月の霜月に行われる、神々を招いてもてなし、復活を祈る儀式)として旧暦11月に行いました。現在は全国的に10月に秋祭りが行われています。秋祭りは稲作の終りに神の恩恵に感謝するもので、全国の各神社で行われます。
秋は実りの季節です。秋祭りは、収穫に感謝したり、踊りなどの芸能を奉納したりする行事があります。秋祭りは地域の歴史や文化に触れる貴重な機会です。五穀豊穣を祈っていた時代から続く伝統は、今も多くの町で色鮮やかな行事として引き継がれています。豊年祭や感謝祭が各地で開催され、収穫を祝い、家族や地域の人々が一堂に会する場となっています。日本人の食と自然に対する敬意を今に伝える大切な文化なのです。
6. 旬の実りを楽しみ、秋を満喫
食欲の秋が到来しました。秋から冬にかけて収穫を迎える果物や魚、野菜など、さまざまな旬の食材が美味しく豊富に揃う季節です。紅葉狩りや秋祭りなど、季節を感じるイベントが開催され、晴天が多くさわやかな日が続き、1年の中でも過ごしやすい時期です。秋を満喫できる季節の料理や果物の味覚と、花や紅葉などともに楽しみましょう。
日本のあちこちで楽しめる紅葉は秋の深まりとともに色づき、豊かな色彩を見せる季節です。全国各地に紅葉を楽しめる自然豊かな場所では渓谷や山々が鮮やかな赤や黄色に包まれ、訪れる人々に秋の深まりを感じさせてくれます。手軽なハイキングで辿り着く紅葉スポットでも、森の中の清々しい空気で心身共にリフレッシュできますね。
秋祭りや収穫祭など様々なイベントが催されています。食欲の秋を満たすグルメフェスティバルや、豊作を感謝する秋祭りは楽しめます。秋の夜長を彩るイルミネーションでの紅葉ライトアップといった、夜間特有の幻想的な風景を楽しむことができるイベントもあります。日中とは違った魅力を放ち、訪れた人々に特別な感動を提供してくれます。
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