訪日外国人は、ホテルより純和風の宿、泊まりたい

インバウンドの増加と、オーバーツーリズムへの課題
今日の趣き-blog-

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 1. 白川郷の合掌造り民宿
 2. 高野山の宿坊
 3. 京都の美山、かやぶき民家の宿 

出典:Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

外国人観光客に人気なのが伝統的な日本家屋の宿です。特にリピーターで日本を訪れる外国人は「伝統的な日本を体験したい」「日本のふつうの生活体験をしてみたい」と、都会のホテルから離れ、田舎の古民家や京都の町家に泊まっています。
古民家や町家が宿として再生されることは、外国人観光客にとっては日本でのかけがえのない経験ができる場になります。現在の日本でも、急増した空き家を上手に再生して利用すれば、すばらしい町や集落ができる可能性もあります。空き家の問題も解消されながら、新たな観光資源が生まれるといいですね。


1. 白川郷の合掌造り民宿

白川郷の合掌造り集落(しらかわごうのがっしょうづくりしゅうらく)は、飛越地方にある合掌造りの集落群です。1995年(平成7年)12月9日に、五箇山の合掌造り集落と共に、白川郷・五箇山の合掌造り集落(しらかわごう・ごかやまのがっしょうづくりしゅうらく)としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録され、日本では6件目の世界遺産となりました。合掌造りがいつ始められたのかは定かではありませんが、江戸時代中期にあたる17世紀末に原型ができたと推測されています。

白川郷のなかほどの荻町集落(おぎまちしゅうらく)には状態の良い合掌造り住宅59棟が残り、江戸時代末期から明治時代末期に建てられ、十分に伝統的な集落の景観を残しています。荻町の合掌造り集落は妻を南北に向けて整然と並び、家ごとの塀がないことが、独特の景観を形成しています。一歩入れば合掌集落はもとより自然を体感しながら世界遺産の里を堪能できます。

合掌造りの民宿が今日まで大切に守られ残されてきたのは、合掌集落内にある山本家の先代の山本幸吉氏の合掌集落保存の取り組みによります。荻町内の合掌造りに住んでる住民に、合掌家屋を「売らない」「貸さない」 「壊さない」の三原則の住民憲章を策定して保存活動を展開し、民宿利用による保存を働きかけをしたことです。これによって民宿を主体とした観光利用による集落の保存体制が進められ、現在の合掌集落が成り立ち、ユネスコの世界遺産に登録されました。

合掌造り集落の観光の醍醐味は、合掌造り建物での宿泊です。茅葺き屋根の建物の中の、煙で黒光りした柱に囲炉裏の香りや、囲炉裏を皆で囲んで地元郷土料理を味わい、民謡や白川村の語りなど、昔ながらの風情や情緒を肌で感じることができるのも魅力的です。
合掌集落内にある合掌造りの民宿の宿泊施設は、部屋数や収容人数が多くありません。 特に、ここ数年は訪日外国人観光客に人気が高く、予約で満室になってしまう状況です。


出典:世界遺産マニア
出典:民宿 源作
出典:合掌乃宿 孫右エ門

【公式】白川郷観光協会

出典:よきち
出典:幸エ門

白川郷 純米にごり酒 720mlx3本


日本の原風景ともいうべき美しい景観をなすこの合掌造り集落が評価され、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されましたが、建物や景観だけではなく、地域に根付く住民同士の相互扶助の営みが高い評価を受けたといわれています。
白川郷では「結(ゆい)の心」を大切にしています。「結」とは相互扶助のことです。白川郷の生活は、昔から個々の家の助け合いと協力があってこそ成り立つものでした。冬は雪に閉ざされてしまうので、家同士が助け合わないと生きていけないくらい、厳しい自然条件でもありました。そのため、1年を通して様々な暮らし・行事の場面で助け合いが必要とされ、白川郷ならではの相互扶助の関係が築かれていきました。
その「結」の心は現代にも、しっかりと引き継がれており、例えば合掌造りの茅葺屋根の吹き替えを、村をあげてみんなで協力して行っています。そしてこの共同作業の場は、次の世代へ先人の生活の知恵を伝える貴重な場、きっかけにもなっています。そんな「結」の心から、現代が忘れてしまっている「人々が力を合わせて助け合うことの大切さ」と「人と人のつながりや絆の大切さ」を再認識することができるのではないでしょうか。

観光客が訪れる合掌造り集落には、現在500人近い村民が暮らしています。今でも人びとの暮らしが営まれていることが世界遺産としての価値となり、地球上に唯一無二の美しさが多くの人を魅了してきました。先祖から大切に受け継いだ集落と家屋を守るために村民がたゆまぬ努力を重ねてきた結果なのです。

今、世界各国ではレスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)の取り組みが進んでいます。 観光客もツーリズムを構成する要素であると捉え、観光客が意識や行動に責任を持つことで、より良い観光地形成を行っていこうという考え方です。自分の行動が地域や環境へ負荷を与えてしまうかも知れないことを認識し、自律した行動を実践していく、これからの観光のカタチです。レスポンシブル・ツーリズムとは、観光地の環境・文化・社会への負荷を軽減する今注目の観光スタイルです。

白川郷の生活と観光を両立する暮らしには、責任と助け合いが欠かせません。この村に一歩足を踏み入れたら、観光客も村民のひとりであるとの考え方です。旅先では責任と助け合いを意識し、マナーを守ることは、この地で営まれる村の暮らしを尊重することなのです。マナーを意識して観光を楽しみましょう。


2. 高野山の宿坊

高野山(こうやさん)は、和歌山県北部、和歌山県伊都郡高野町にある地域の名称です。周囲を1,000m級の山々に囲まれた標高約800mの山上盆地に町並みが広がる「高野山」は「一山境内地」といわれ、高野山全域が寺の境内とされ、境内の中に発展した町です。1200年前に弘法大師空海が開創した真言密教の聖地で、高野山全域を「総本山金剛峯寺」という聖地として信仰を集めています。

高野山には、「金剛峯寺」をはじめとする寺院が117あり、全国各地からたくさんの修行僧が集まり、盛んに信仰されていました。かつては、信仰する山に行く際に、「御師(おし)」という人を頼って巡礼するのが一般的で、寺院には、それぞれに異なる歴史や見所があります。117の寺院のうち、52の寺院が宿坊となっており、一般の参拝者が宿泊できます。

宿坊では、「写経(しゃきょう)、お経を書き写すこと」や「阿字観(あじかん)、密教の冥想法」の他、朝から「朝勤行体験(あさごんぎょうたいけん)、読経や礼拝のお勤め」や「護摩祈祷(ごまきとう)、護摩木を焚いて祈願」などの修行体験ができたり、精進料理をいただくことができます。俗世から離れて非日常的な空間で貴重な体験ができるのは、高野山を訪れる醍醐味のひとつです。宿坊に宿泊して特別な時間を過ごすことができます。

本来は僧侶や参拝者のための宿泊施設ですので、日本人からすると、修行のイメージがありますが、これもまた外国人観光客にたいへん人気なのです。一口に宿坊といっても設備や内容は様々です。ふすまで仕切られた和室でお風呂とトイレは共同というところから、バス・トイレ付き個室が完備されたところや、旅館のような雰囲気の宿坊も少なくありません。洋室にベッドという部屋も最近はありますが、外国人観光客用というより足腰が弱くなったご高齢の利用者のためのもので、外国人はむしろ和室を好んでいます。朝のおつとめや護摩祈祷などへの参加は自由ですが、観光客として拝観できる範囲よりさらに奥で、仏教や神道の世界に触れ、ふだんはできない貴重な体験ができるので、参加する人は多いようです。


高野山宿坊寺院プロモーション映像(日本語)
一般社団法人高野山宿坊協会  – YouTube



出典:宿坊「西禅院」
出典:宿坊「西禅院」
出典:大阪・和歌山のおでかけ情報otent(おてんと)
出典:大阪・和歌山のおでかけ情報otent(おてんと)

高野山真言宗 総本山金剛峯寺

出典:宿坊「福智院」
出典:宿坊「福智院」

聖食品 高野山ごま豆腐 白胡麻 120g 20個


全国各地にある宿坊の中で、とりわけ外国人に人気なのが高野山です。そのミステリアスな雰囲気に外国人はたいへんひかれるのだそうです。英語が話せる僧侶や外国人の僧侶がいる寺もあることから外国人観光客が急増し、多くの外国人が宿泊しています。日本人だけでなく訪日外国人からも人気の理由は、高野山のインバウンド対策です。

高野山の公式ウェブサイトは、日本語と英語とフランス語の3か国語に対応 しています。ウェブ上ではアクセス情報などの基本情報のほか、高野山の歴史や巡り方、動画などをインバウンド向けに配信しています。ウェブサイトを多言語化することで、 より多くの訪日外国人に観光スポットの情報を届けられるようになり、観光地の魅力を正しくアピールし、実際に足を運んでもらうことにつながる可能性があります。
高野山に点在する117の寺院のうち、約半数の52の寺院が 「宿坊」 を実施しています。宿坊とは、神社やお寺の中にある宿泊施設のことで、本来は、僧侶のみが宿泊する場所、または、参拝者が心身を清めるための施設でしたが、現在では 訪日外国人観光客を含めた一般観光客などの宿泊も受け入れています。神社やお寺に泊まるだけではなく、写経、座禅、精進料理、法話、読経、滝行など修行体験もでき、 日本文化の体験に興味・関心がある欧米圏を中心とした訪日外国人に人気のアクティビティ となっています。

昔から高野山では、越後の国は何々院、山城の国は何々院と、それぞれの所縁坊が決まっていました。お寺と諸国大名との檀縁関係によるものと考えられます。西暦1832年(天保3年)の調べでは、812の寺院が存在していたようです。しかし、明治の廃藩置県によって高野山の所領や山林が国に没収され、また火災で焼失したりと、今日では寺院117ケ寺、その内宿坊寺院は52ケ寺となっています。現在では、宿坊選びも楽しみの一つで、精進料理、客室、お風呂や庭園等にそれぞれ特徴も有り、般若湯(はんにゃとう)と呼ばれる、お酒やビールも自由にお飲み頂けます。宿坊自慢の精進料理を召し上がりながら心安らぐ聖山での一夜をお過ごし頂き、翌朝は本堂での早朝勤行に参加されるのは如何でしょうか。

泊まる
一般社団法人高野山宿坊協会・有限会社高野山参詣講 (shukubo.net)


3. 京都の美山、かやぶき民家の宿

かやぶきの里・北村(かやぶきのさと・きたむら)は、京都府南丹市美山町北にある山村集落です。今では珍しくなった茅葺き屋根の家屋がここには数多く残っています。のどかな田園風景とかやぶき屋根がマッチして、心がなごむ光景となっています。北村は、平成5年(1993)12月8日に重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。中世には林業を主産業とする山村集落でした。集落の中を通る街道は、いわゆる鯖街道の一つとされ、京都と若狭の多くの旅人が行き来し、いろいろな地方の影響を受けたといわれています。

美しい農山村の景観を保ち続けてこられた背景には、地域住民の固い決意と地道な努力があります。1993年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたことを機に、地域住民が「茅葺屋根の景観と暮らしを守り、活かしていく」ことに100%合意し、歴史的景観の保全と住民の生活を両立すべく、「一般社団法人京都・美山・北村かやぶきの里保存会」を組織し、さまざまな検討の結果、住民が出資した「有限会社かやぶきの里」を設立し、建造物の維持管理および観光施設としての運営を組織的に行うようになりました。

家屋の保存優先を基本理念に掲げた「北村かやぶきの里憲章」を制定し、「(土地や家屋を)売らない」「(集落全体を)汚さない」「(集落の景観や自然を)壊さない」など独自のルールを定めました。以来30年にわたり同地域では、保存会が中心となって行政や関係機関の支援を得ながら、茅葺屋根の復元や修理修景事業を行ってきました。

観光に関する事業としては、 地域住民によるガイドツアーの実施、観光客から駐車場代を徴収して地域の保全に充てる活動、農家民泊プログラムの受け入れなどに取り組み、農業体験や積雪期のイベントなども開催しています。 訪れる訪日客は台湾を中心とした東アジアからの個人旅行者が全体の8割を占め、 ベスト・ツーリズム・ビレッジ認定(持続可能な開発目標に沿って、観光を通じて文化遺産の促進や保全、持続可能な開発に取り組んでいる地域を認定)の効果もあり、今後はさらに幅広い地域から訪日客が訪れると期待されています。

集落内の住宅は山麓の傾斜地を整地して建てられており、現存している茅葺き屋根の家屋の多くが江戸時代中頃から末期にかけて建てられたもので、「北山型民家」に分類されています。丈の高い入母屋造の屋根と神社の千木のような飾りが特色です。
50戸ほどのうち、交流館、民俗資料館、民宿なども含めた38戸が茅葺き屋根です。

茅葺き屋根の維持のためには数十年毎に葺き替えをする必要があります。かつては村の共同体によって、村民総出で屋根の葺き替えが行なわれていましたが、自治体から補助金などが支給されるようになってからは、専門業者に任せるようになりました。

茅葺き屋根の住居は火に弱い建物であるため、火災対策は重要事項となっています。住居の母屋毎に「放水銃」が配備されている。普段は小屋の形をした収納箱の中に収納されているが、使用時は(おそらく遠隔操作により)液圧シリンダーにより小屋の屋根が開き、放水銃が迫り出すようになっています。年に2回、一斉放水が行われます。

出典:美山KAYA Villa – TRiP EDiTOR
出典:美山KAYA Villa – TRiP EDiTOR
各家に設置されている放水銃
年に2回行われる一斉放水
情報サイトや観光マップも充実

京都・美山町の観光情報サイト

出典:LIVE JAPAN (日本の旅行・観光・体験ガイド)
出典:道の駅 美山ふれあい広場「ふらっと美山」

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京都には古民家が立ち並ぶ南丹市美山町は「日本一の田舎づくり」の キャッチフレーズを掲げた町で、古民家に泊まれる場所として知られています。積極的な「田舎」をアピールした結果、美山町の観光客数は増加が期待されている場所なのです。

美山町の魅力はやはり古いかやぶき住居に泊まれることです。最近では特定の地域でしか見かけなくなり、いまやかやぶき住居に泊まれるのは本当に貴重な体験ですです。美山町には泊まれる「かやぶき民家」は11軒ほどもあります。ここまでかやぶき民家が集まっているところは全国的にもそう多くはないでしょう。この古き良き日本の原風景が残る美山町ですが、国内のみならず、近年では外国人旅行客も増えています。観光客が増えている理由としては、美山町のPR活動が大きいことです。

京都 美山ナビ
日本の原風景が残る京都・美山町の観光情報サイト

美山町観光協会が運営する「美山ナビ」は英語版で発信することで、美山町の魅力を伝えています。町内の宿泊施設を海外各国の宿泊サイトに登録するなど、外国人旅行客にとっては宿泊予約が便利になりました。観光客向けに「美山の楽しみ方」について観光協会が英語で電話対応するなどのインバウンド対策もあります。地元のバス会社や私鉄系のバスが協力し合い、京都駅から観光客向けツアーの直行便バスを増便するなど、このような取り組みによって外国人観光客が増えたことが大きいようです。

地元の人々の長年の努力により、日本の伝統文化がこうして守られてきました。この集落にある建物の戸数は、江戸時代からほとんど変わっていないというから驚きです。自給自足で生活できる最低限の戸数が、脈々と受け継がれてきたといいます。一番古い建物は、今から約230年も前に建てられたのだそう。江戸時代からの歴史ある建物が今も見られるのは、とてもありがたいことです。

「観光客の方々に、五感を通してこの美山かやぶきの里を楽しんでほしい」という、見渡す限り豊かな自然に囲まれたこの集落は、空気がとても澄んでいます。「おもわず深呼吸したくなる美山町」というキャッチフレーズの通り、大きく深呼吸するとその空気のおいしさに感動し、日々の疲れがリセットでき、心も体も元気になるような気がします。夜にはまばゆいばかりの星空が見渡せ、夏になるとホタルを見ることもできます。